40~50代男性の身体の基礎知識
2018.12.03

EDで心配すべきは「動脈硬化」―腹上死しないために―

ED(勃起不全)で悩む男の関心事は、もっぱら「性行為中に男として役に立つ」ことであろう。しかし、EDで心配すべきは、それが血管からのSOSでもあるということだ。血管の衰えはEDの原因となり得るが、更に恐ろしいのは腹上死。性交中は血圧が上がり脈拍数が増え、血管や心臓に大きな負担がかかるのである。万が一、愛人との行為で腹上死となれば晩節を汚しかねないため、血管のSOSには早めに耳を澄ませよう。

EDと腹上死をもたらす「動脈硬化」

腹上死(性交死)とは、決して都市伝説の類ではない。実在する死因であり、30~40代の中年男性に多いとか、報告されているよりも実際は多く起きているなどの意見もある[1][2]。ほとんどは、心筋梗塞や心不全といった心血管系の病気と、クモ膜下出血や脳出血などの脳血管系の病気によって起こり、このいずれも血管の動脈硬化によってもたらされるのだ。

動脈硬化とは、動脈が本来もっている強い血流に対する「しなやかさ」を失って、動脈壁の硬化を引き起こし、組織へ血液を運搬するという機能を失った状態、もしくはその過程にある状態のことだ[3]。例えば、心臓に血液を送る冠動脈が動脈硬化を起こして栄養を送ることができなくなると、心臓の細胞が死んでしまい心筋梗塞となる。他にも脳の細い血管が動脈硬化を起こせば、血圧の負荷に耐えられずに血管が切れてしまい、脳出血という状態になる。

では、なぜ動脈硬化がEDを引き起こすのだろうか。勃起するには陰茎に血液を流し込む必要があり、その血液を供給する血管が動脈硬化により狭くなることがEDの一因となるからだ。つまり、腹上死の原因もEDの原因も、もとを辿れば動脈硬化があるのだ。

EDは動脈硬化を知らせるサイン

EDは、血管からの先駆けのSOSだ。なぜなら、陰茎に注ぐ血管は細いために、動脈硬化の影響を受けやすいからである。

血管の太さは、心臓からすぐの動脈だと直径2.5cm(500円玉くらいの大きさ)もある。それが分岐して全身へと伸びていっているので、末梢に行くほど血管は細くなっていく。腕の血管は直径5~8mm(鉛筆くらい)で、腎臓や脳といった内臓の隅々には直径0.2~0.5mm(シャープペンの芯くらい)の細い動脈が栄養を送っている。よく知られている毛細血管は、細胞に栄養を送り届けるためにもっと細く、髪の毛程度の太さしかない[4]。

陰茎に血液を送っている血管は、1~2mmほどの細い動脈だ。この細い動脈が動脈硬化を起こす理由の大きなものは「高血圧」である。血管にかかる圧力が高い状態が続くと、細い血管は傷つき、その傷を治す過程で少しずつ血管が固くなってきてしまう。細い血管は、太い血管と比較して構造的に弱く、血圧の影響を受けやすいことは容易に想像できるだろう。動脈硬化は細い血管から徐々に蝕んでいき、その知らせとしてEDが発症する。

ちなみに、太い血管で動脈硬化が起こるメカニズムは細い血管と少し異なっている。いわゆる悪玉コレステロールの影響や、血管の壁の中に石灰が沈着してしまうことによる。

動脈硬化をケアするには

では、動脈硬化をケアするにはどうすればいいのか。一目で理解できる図をお見せしよう[5]。

ドミノ牌の形をしたEDや心不全(心筋梗塞など)や脳卒中(脳出血、脳梗塞など)が並び立っているが、その源を辿れば糖尿病や脂肪肝、高脂血症、高血圧、高血糖がある。それらは、生活習慣の乱れの結果として起こっている肥満が原因となっていることがよく分かる。

すなわち、動脈硬化、そしてEDをケアするには、「生活習慣の改善」と「肥満解消」が王道なのだ。そんなことは、耳にタコができるくらい聞いていることかもしれない。しかし、改めてその重要性に気づいて、行動に移してもらえれば幸いである。

生活習慣の改善や肥満解消について、詳しくは『メタボが男の活力・精力を奪う―原因を知って対策を!―』『ED予防に良い食事とは?働く男のカロリーハック』を参照いただきたい。

参考文献

  1. [1]上野 正彦. "性行為と心血管事故の発生の関連" EDネットクリニック.com.
  2. https://ed-netclinic.com/ul_pdf/prac00000062.pdf(参照2018-11-07)
  3. [2]豊田 泉. 性行為による脳血管障害の検討, 昭医会誌 1993; 53(4): 362-367
  4. [3]南山堂医学大辞典 第20版. 南山堂 2015; p1753
  5. [4]厚生労働省. "健診・保健指導のあり方"
  6. https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/seikatsu/pdf/03-b-05.pdf(参照2018-11-07)
  7. [5]伊藤裕. メタボリックドミノとCKD. 日本内科学会雑誌 2011; 100(1): 191-198

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