生活習慣病
2018.12.03

メタボが男の活力・精力を奪う ―原因を知って対策を!―

男のポッコリお腹は、かつて「恰幅が良い」と称されていたが、今や「メタボ腹」と呼ばれて忌み嫌われるようになった。それもそのはず。メタボリックシンドロームは健康に良くないのはもちろん、男の性機能にまで悪影響を及ぼすからだ。いつまでも活力あふれる格好良い男でいるために、メタボ対策は最優先事項と心得よ。

肥満者が多い米国では、メタボ男は「自己管理ができない」と低く見られるという。日本ではビジネスが体型で左右されることは(少なくとも表向きには)ないので油断しがちだが、女性からは「見苦しい」「恋愛対象外」「生理的に無理」などと情け容赦のない評価が水面下で行われているのである[1]。

しかも、メタボはED(勃起不全)をもたらす原因ともなり得る。仮にメタボ腹でも気にしないという女神が現れて、いざ愛を交わそうと思っても男性として役に立たないなどという悲劇が起きかねない。もし健康診断などで肥満やメタボ、生活習慣病を指摘されているなら、今すぐに対策を始めよう。

メタボが男をダメにする!

まずはこの図を見てほしい[2]。メタボとEDのつながりを視覚的・直感的に理解することができる。

これは、慶應義塾大学医学部の伊藤裕教授が提唱した「メタボリックドミノ」という模式図である。「メタボリック」という言葉は「代謝」という意味で、代謝の異常により連鎖的に起きてくる不調や病気のつながりをドミノの比喩で表したものだ。

一番奥のドミノが生活習慣で、暴飲暴食や運動不足が繰り返されると肥満のドミノが倒れ、次に高血糖、高血圧、脂質異常症などが続く。ここで生活習慣を改善しないと、ドミノは次々と倒れていき、いずれ手前にあるドミノが倒れ、心不全や認知症、脳卒中、透析、失明などの重大な病気になってしまう。

よく見ると、一番手前に「ED」と書かれているドミノもある。つまり、EDは不摂生な生活を送った結果として起こる男の生活習慣病と捉えることもできるのだ。

メタボはただの肥満ではない

メタボという言葉には肥満者の代名詞というイメージが定着してしまったが、実はメタボはただの肥満ではない。内臓脂肪が蓄積したうえに高血糖、高血圧、脂質代謝異常などの危険因子が重積した状態を指す言葉である。

メタボリックシンドロームの診断基準(男性の場合)[3]
①内臓脂肪の蓄積(ウエスト周囲長が85cm以上 ※内臓脂肪面積100cm²に相当)
②脂質異常(中性脂肪が150mg/dL以上、HDLコレステロールが40mg/dL未満)
②血圧高値(収縮期が130mmHg以上、拡張期が85 mmHg以上)
②高血糖(空腹時血糖が110 mg/dL以上)

①を満たしたうえで、②の2つ以上に当てはまるとメタボと診断される。

先ほど示したメタボリックドミノの図でいうと、生活習慣のドミノが倒れ、肥満やインスリン抵抗性(血糖値を下げるホルモンであるインスリンの効き目が悪くなった状態)のドミノも倒れ、3つ並び立つ食後高血糖や高血圧、高脂血症のうち2枚か3枚かが倒れてしまった状態がメタボリックシンドロームということになる。

メタボとEDの関係

メタボの位置づけが理解できたところで、EDとの関係を見ていこう。先ほどメタボの診断基準として挙げた要素(内臓脂肪、脂質、血圧、血糖)はいずれもEDとの関連があると言われている。

高血糖(糖尿病)とED

EDを引き起こす原因として最もよく知られているのが糖尿病だ。実際に、糖尿病患者の35~90%にEDが発生すると言われている。血糖値が高い状態が続くと、細小血管がダメージを受け、陰茎への血流が悪くなる。さらに、陰茎や会陰に張り巡らされている神経にも障害が起き、勃起を達成できなくなってしまう。

また、身体の抵抗力が弱まって亀頭包皮炎など陰茎の感染症にかかりやすいことや、性欲低下やうつ状態などの精神的なダメージも相まって、勃起に必要な海綿体平滑筋の弛緩がうまく起こらなくなってしまう[4]。

高血圧とED

高血圧患者にもEDが多い。特に重症のEDを合併しやすいと言われている。一般人の重症EDの頻度は1割程度であるのに対し、高血圧患者では5割近くにもなるという報告もある。逆にEDがあると高血圧になりやすいことも分かっており、EDで受診したタイミングで高血圧が見つかることもよくある[4]。

ご存知の通り、勃起するには陰茎に血液を送り込まねばならないので、血圧と勃起は密接な関係にある。血圧の調節がうまくいかない状態なのだから、思うように勃起できないのも頷ける話ではないだろうか。また、高血圧によって起こる心臓や血管の病気の影響でEDが起こっている可能性もある。

内臓脂肪や脂質異常とED

糖尿病や高血圧ほど明らかなEDとの関係性はみられないものの、肥満(特に内臓脂肪の蓄積)と脂質異常もEDに悪影響を与える要素であることは論を俟たない。いずれも動脈硬化を引き起こす原因となり、陰茎に血液を送り込む血管の機能を障害してEDをもたらすからだ。

また、若い時と同じような食生活を送っているのに、壮年期に入ると中性脂肪の値が高くなったり、体重が増えたりする原因の一つに「男性ホルモン」がある。男性ホルモンは男を男たらしめる物質で、加齢によってその分泌量が減ってくると、太りやすくなることが分かっている[1]。

男性ホルモンが少なくなった状態がいわゆる「男性更年期」で、こうなると精力どころか、生きる活力までもが低下してしまう。詳しくは、『疲れやすい、勃たない…40代から増える「男性更年期」にご用心!』『「男性ホルモン多い=ハゲ」は間違い!?男性ホルモンの働きってなんだ』を参照していただきたい。

男の活力を維持するためのメタボ対策

ここまでの解説で、活力あふれる格好良い男でいつづけるためには、メタボ対策は必要不可欠であることがお分かりいただけたのではないだろうか。メタボは生活習慣の乱れが諸悪の根源。若い頃のような暴飲暴食はやめて、身体によいものを必要十分に摂る大人の食べ方に切り替えよう。

食事の2割を残す

ダイエットするにあたり、食事を抜いたり、特定の食べ物だけを食べ続けたりするのは悪手だ。リバウンドしたり、栄養不足で倒れたりしかねない。簡単なのは、いつもの食事を2割だけ残して食べる方法。これで、極端な栄養不足に陥ることなく、カロリーを制限してリバウンドを防ぐことができる。

ただし、これは普段からある程度のバランスのよい献立を選べている場合だ。主食・主菜・副菜の揃った和食の定食が栄養バランスに優れているので参考にするといい。また、1口で30回噛んで食べると満腹感を得やすいので試してみてほしい。

運動は筋トレ→有酸素運動の順

メタボな人は運動嫌いが多いだろうが、将来の寝たきり予防のためにも運動習慣を付けておこう。運動といっても1日30分程度でいいし、10分×3回というふうに分けてもいい。ウォーキングやジョギングといった有酸素運動を始めるなら、その前にスクワットなどの筋トレをすると、成長ホルモンが出てより脂肪が燃焼しやすくなるのでおすすめだ。

毎日忙しくて運動をする時間がないという人は、通勤時間を活用しよう。いつもの駅より一駅手前で降りて歩くのもいいし、エスカレーターを使わずに階段で登るのもいい。オフィスの中では、なるべく座っている時間を減らすようにしよう。椅子に座っているときも、お腹を凹ませれば腹筋のトレーニングになる。また、床にゴミが落ちていたら率先して拾おう。腰を曲げて取るのではなく、しゃがんで取ればスクワット運動と同じだ。

そのような振る舞いを見て世の女性たちが悪く思うはずがない。メタボ対策で心身ともに一つ上の男を目指そう。

参考文献

  1. [1]岡宮裕. なぜ一流の男は精力が強いのか. 経済界 2015; 65-75
  2. [2]伊藤裕. メタボリックドミノとCKD. 日本内科学会雑誌 2011; 100(1): 191-198
  3. [3]メタボリックシンドローム診断基準検討委員会. メタボリックシンドロームの定義と診断基準. 日本内科学会雑誌 2005; 94(4): 794-809
  4. [4]日本性機能学会, 日本泌尿器科学会. ED診療ガイドライン 第3版. リッチヒルメディカル 2018

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