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2018.12.26

マムシの効果は?|毒ヘビも余さず使うは人間の性

精力剤と言うと、パッケージに「マムシ」と書かれたドリンクやカプセルなどを想像する人は少なくないだろう。マムシを一匹生きたまま酒瓶に漬け込んだ「マムシ酒」など、いかにも効きそうなイメージがある。また日本では漢方としてマムシから作った生薬「反鼻」(はんぴ)が使われてきたという歴史もある。本当にマムシには男の活力をアップする効果があるのだろうか。調べてみると、意外な事実がわかってきた。

監修医師

監修 管理栄養士  横川仁美

マムシとは?

マムシはクサリヘビ科に分類される毒ヘビの一種である。日本では北海道から九州まで広く分布しており、水辺の草地や耕作地、岩の多い丘陵の斜面などに生息し、カエルやネズミ、鳥類や魚類などの小型動物を食べて暮らしている。上の写真の通り、頭が平たい三角形で鼻の部分が反り返っており、胴体は太めなのが特徴だ[1-2]。

マムシの毒は大丈夫?

日本では1年間で約3000人がマムシに噛まれる。マムシの毒は強力で、噛まれると血液毒や神経毒が体内に入り込んで、激痛を伴う腫れや出血を起こす。重症例では内臓に及び、年間で10人程度が亡くなると言われている[3]。マムシは夜行性で、夏になると妊娠したメスは胎児のために日光浴をする習性がある[1]。このとき人間と遭遇する機会が増えるため、噛まれるのは夏の早朝や夜が多いそうだ。夏に草むらに入るときは長靴やゴム手袋を着用するようにしたい[3]。

この毒の主な成分はタンパク質で、噛まれたときには直接体内に入って毒性を発揮する。しかし、マムシ酒やマムシの黒焼き・蒸し焼きなどを口から摂取する場合は、毒にはならないことが経験的に知られている。ただし、何らかの理由で不調が起こる可能性はなきにしもあらず。その際には口にしたものを持って近くの内科クリニックなどを受診してほしい。

マムシを用いた民間療法

このように毒ヘビとして広く知られるマムシだが、人間はしたたかに利用し続けてきた。民間療法としてマムシは余すところなく使われる。生き血や生胆、皮や骨などを、粉末や黒焼き、酒漬けなどにして、疲労回復や冷え症、扁桃腺炎、打身、切り傷、痛み止め、解熱などの多様な目的で利用してきたのだ[1-2]。

また、マムシを原料として「反鼻」(はんぴ)という生薬も作られている(マムシの鼻が反っていることが名称の由来)。反鼻はマムシの皮を剥いで内臓を取り、長く伸ばして乾燥させたもので、滋養強壮の効果があると言われている。この反鼻を用いて処方される漢方薬として伯州散(はくしゅうさん)や反鼻交感丹料(はんぴこうかんたんりょう)がある。これらの漢方薬は慢性の化膿性疾患(潰瘍や痔瘻など)や健忘症、うつ病に効能があるという。

マムシは男性機能にどのくらい効く?

では、マムシは男性機能にどのような利点をもたらすのであろうか。反鼻には、脂肪酸、タウリン、コレステロール、アミノ酸、ビタミン類が含まれる[2]。これらの成分のなかに、男性の精力を高める効果を示すものはあるだろうか。結論から言うと、残念ながらマムシと男性機能の関係を科学的に解明したエビデンスは見当たらなかった。

マムシの効果は不明

マムシの薬理活性を研究した論文[4-5]を発表している近畿大学薬学部の久保道徳教授(当時)は、ある読み物のなかで「ネズミに与えた実験では、免疫マクロファージが活性を帯びる、睾丸内の古い精子がリフレッシュする、血流が改善する、水泳の記録が延びる、ジャンプ力が強くなる、記憶がよくなるなどの結果が出ました。しかし、これらの効能は胃や肝臓の成分にあり、肉の部分にはないので、反鼻は最もよい部分を用いているとは言えません。しかも人間にも同じ効果があるかどうかは、正直いって分かりません」とコメントしている[6]。

また、日本蛇族学術研究所の沢井所長(当時)は、「蛇は飢餓に強い、殺してもなかなか死なないなどの俗言から、マムシは生命力が強い、精力が旺盛だということにつながったのではないか」と推測している[6]。もちろん、マムシの精力が強いとしても、マムシが精力剤として効果があるということにはならない。

なお、男性機能とは直接的な関係はないが、反鼻の強壮効果を調べた動物実験がある[7]。マウスを寒い環境に置いたり揺さぶったりしてストレスをかけた状態で、反鼻エキスがどれほどの効果を示すか調べたところ、体温の低下を防止して運動量が増えたり、疲労を予防したりする効果があったそうだ。この論文の著者は、反鼻に含まれる「タウリン」がこのような強壮効果の一部に貢献しているのではないかと考察している。タウリンについて詳しくは『タウリンの効果は?|栄養ドリンクの定番成分はEDを改善するか』を参照いただきたい。

余談だが、関西ではうな丼のことを「まむし」と呼ぶ習慣がある。これは、うなぎが蛇のように長いからではない。当地のうな丼はうなぎの蒲焼をご飯の間に挟んで蒸すスタイルで提供されることから、間蒸し(まむし)と呼ばれるようになった[8]。うなぎも精力の付く食べ物として知られているが、その効果やいかに。気になる方は『うなぎの効果は?|男の知性と品格が問われる現代うなぎ事情』をご覧いただきたい。

参考文献

  1. [1]神農子. 反鼻(ハンピ). 生薬の玉手箱(2010年2月15日号)
  2. https://www.uchidawakanyaku.co.jp/tamatebako/shoyaku_s.html?page=221(参照2018-11-13)
  3. [2]福田龍株式会社. ハンピ(反鼻). 医薬品原料(漢方系生薬)
  4. http://www.fukudaryu.co.jp/sozai2/hanpiHP.pdf(参照2018-11-13)
  5. [3]岡本修. 第63回日本皮膚科学会西部支部学術大会③ミニセッション 1-10 マムシ咬傷 予後を予測できないか. マルホ皮膚科セミナー(2012年7月5日)
  6. http://medical.radionikkei.jp/maruho_hifuka_pdf/maruho_hifuka-120705.pdf(参照2018-11-13)
  7. [4]久保道徳ほか. 生薬・マムシの薬理活性研究(第1報)50%エタノールエキスの実験的胃潰瘍に対する作用. YAKUGAKU ZASSHI 1989: 109(8); 592-599
  8. [5]
  9. 森浦俊次ほか. 生薬・マムシの薬理活性研究(第2報)マウス網内系の貪食能に及ぼす50%エタノールエキスの影響. YAKUGAKU ZASSHI 1990: 110(5); 341-348
  10. [6]安野光雅ほか. 審問38 マムシが精力剤として、効果があるというのは本当か. 安野光雅の異端審問. 朝日新聞社 1994; 274-276
  11. [7]加藤正秀ほか. 反鼻の薬理学的研究-1-反鼻の寒冷ストレスおよび振盪ストレス負荷マウスに対する作用. 生薬学雑誌 1985: 39(4); 270-276
  12. [8]塚本勝己ほか. 日本うなぎ検定―クイズで学ぶ、ウナギの教科書― 小学館 2014; 17-20

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